通信制大学って、本当に卒業できるの?

入学を考えている人が最初に検索するのは、たいていそういう疑問だと思います。私もそうでした。

私は慶應義塾大学通信教育課程(慶應通信)を、8年かけて卒業しました。在籍期間は2014年10月〜2022年9月。「8年」と聞くと特別な事情があったのかと思われるかもしれませんが、事情といえばただひとつ——「仕事があって、生活があって、思ったより全然進まなかった」というだけです。

この記事では、卒業が難しい構造的な理由と、続けられる人・脱落する人の分かれ目を、自分の体験をもとに正直に書きます。

最初に言っておく。8年かかった。でも卒業した

入学したのは20代後半。当時はまだ子どもがおらず、「自分で勉強時間を自由にコントロールできる」と思い込んでいました。「最短4年で卒業してやるぞ」と意気込みだけは十分でした。

でも、入学してすぐに現実の壁にぶつかります。最初の半年、一通もレポートを提出できませんでした。レポートの書き方がわからない。注釈の量も、自分の考察をどこまで入れるかも、何もわからない。最初のレポート(日本史)を提出したのは入学から半年後の2015年4月。結果はもちろん不合格、3回目の再提出でやっと合格をもらいました。

その後、子どもが生まれ、仕事の負荷も変わり、「ライフステージの変化」が学習を直撃しました。辞めようと思った瞬間は数えきれないほどあります。それでも卒業できた理由は「意志が強かったから」ではありません。続けるしかない状況を少しずつ設計していったから——今はそう思っています。

通信制大学の卒業率「10〜30%」という現実

通信制大学の卒業率は、一般に10〜30%程度と言われています。大学によって差はありますが、入学者の大半が卒業できていないのは事実です。

慶應通信の卒業率は公式に公表されていませんが、在籍していれば肌で感じます。入学説明会で会った人が翌年にはもういない。SNSで「○○期に入学しましたが、ついに辞めました」という書き込みを何度も目にしました。

「脱落率90%」という表現もあります。数字は大学によりますが、半分以上が卒業しないというのは、ほぼすべての通信制大学に共通しています。これを知ったうえで入学するかどうかは、大きな判断です。

8年間の単位推移——リアルな数字で見せる

言葉で「進まなかった」と言うより、数字で見せたほうが伝わると思います。私が実際に取得した単位数の推移はこうでした。

年度取得単位状況
2014年度0単位レポートの書き方がわからず半年以上手付かず
2015年度12単位初レポートを4月に提出(不合格→3回目で合格)
2016年度20単位勢いが出てきた時期
2017年度8単位仕事と育児で失速
2018年度22単位盛り返した
2019年度12単位停滞
2020年度29単位朝活・ファミレス勉強で軌道に乗る
2021年度14単位卒論準備期
2022年度8単位卒論完成・卒業
合計125単位卒業要件を満たして2022年9月卒業

かなり浮き沈みがあります。単位を取得できなかったのは初年度だけですが、スクーリングの単位だけ取ってレポートを1本も書かない年もありました。コンスタントに進められるようになったのは2020年度以降——入学から6年目を過ぎてからです。

私が卒業に8年かかった理由——言い訳なしで書く

正直に言います。仕事や育児があったのは本当です。でも、それだけじゃなかった。

英語レポートで7回連続不合格を喰らった時期があります。慶應通信では英語が必修で、しかも卒論指導の許可は英語単位の取得が前提です。英語が大の苦手だった私は、これを後回しにしたうえに、いざ取り組むと7回連続で不合格通知。7回目の通知を開く手は震えていて、「もう無理かもしれない」と泣きながらレポートを書いていた時期です。最終的には「泣きの合格」をもらったと言っても過言ではありません。

レポートを書くのが面倒で後回しにし続けた期間もありました。科目試験の申し込み期限を逃したこともあります。スクーリングの単位だけ取って、レポートを1本も書かない年もありました。

仕事や育児を言い訳にしていた部分は、確実にありました。同時に、通信制大学そのものに構造的な問題もあります。

  • 誰も締め切りを管理してくれない
  • 仲間がいないので「サボっても誰にも迷惑がかからない」という感覚になる
  • 進捗が見えにくく、達成感を得にくい
  • レポートが不合格で戻ってくると、精神的ダメージが意外と大きい

これらが重なると、人は静かに離れていきます。誰かに宣言したわけでもなく、ただ手を止めて、そのまま戻ってこない。そういう「静かな脱落」が一番多いと思います。

辞めようと思った瞬間——複数回あった

1回目は1〜2年目の英語レポート連続不合格期。7回連続の不合格通知が積み重なって、「向いてないのかな」と本気で思いました。1回目の通知ならまだ立ち直れます。2回、3回と続くうちに、通知の封を開ける前から胃が締め付けられるようになる。これが一番きつかったです。

2回目は中盤の長期戦の停滞期。「卒業まで124単位、でも1科目で取れるのは多くて4単位。終わりが見えない」とずっと思っていました。80単位を超えたあたりでようやく「あと少しで卒業できる」という感覚が出てきますが、そこにたどり着くまでが本当に長い。「このペースで本当にゴールにたどり着くのか」という疑念が、何度も頭をよぎりました。

3回目は職場の後輩が放送大学に入学して半年で休学し、そのまま戻らなかったのを見たとき。「やめても誰にも責められない」という静かな誘惑が一番怖かったです。悔しいとか羨ましいではなく、「あ、もういいか」という気持ちが頭をよぎる。私を引き止めたのは強い意志ではなく、「ここで辞めたら学歴コンプレックスがただの未練として残る」という、もっと現実的な理由でした。

辞めたいと思うのは、普通のことだと思います。問題は、そのときどうするかです。

脱落する人に共通する3つのパターン

パターン1:最初に飛ばしすぎる

入学直後、やる気満々で複数のレポートを同時進行して、3〜6ヶ月で燃え尽きるパターンです。社会人が長期で続けるには、最初から「省エネ設計」が必要です。フルスロットルで始めた人が静かに消えていくのを、私は何度も見ました。

パターン2:孤独に耐えられない

通信制大学は基本的に一人で勉強します。仲間がいない・誰かに話せない・進捗を共有できない。これが想像以上にきつい。特に不合格通知を一人で受け取ったとき、話せる相手がいないとそのダメージが長引きます。

パターン3:目的が曖昧なまま入学する

「なんとなく学歴がほしい」「勉強したい気がする」という動機では、しんどくなったときに立ち返る場所がありません。「なぜ卒業したいのか」が自分の言葉で言えないと、逃げ場を探したときに逃げてしまいます。

続けられた人に共通する3つの習慣

習慣1:「やる気」ではなく「習慣」で動く

私を救ったのは「やる気」ではなく「習慣」でした。とりあえずパソコンを開く。何も考えず、手だけ動かす。最初の5分が勝負です。やる気に頼っているうちは、いつまでも始められません。続けられた人は、ほぼ全員「気合い」ではなく「仕組み」で動いていました。

習慣2:時間帯を「朝」に寄せ、場所を「外」に出す

入学当初、私は「子どもが寝た後の1〜2時間」を勉強時間にしていました。でも夜は疲れと眠気に勝てず、集中力が続かない。途中から朝に切り替えました。特に2020年頃からは、土日の休みは朝6時から10時までファミレスで勉強。家ではどうしても集中できず、ファミレスに出ることで強制的に「勉強モード」に入る仕組みです。この朝活+外出勉強に切り替えてから、単位の取れ方が一段上がりました。

習慣3:「やらない期間」を罪悪感なく取れる

続けられた人は「サボる期間」を罪悪感なく取れていました。「今月は忙しいから来月から再開する」と決めて、来月には本当に再開する。やらない期間を「失敗」だと捉えないことが、長く続けるコツです。完璧主義の人ほど、途中で燃え尽きていなくなります。一つだけ注意が必要なのは、全くやらない期間が長くならないようにすることです。できれば、1日5分でもいいので、毎日取り組むことをオススメします。

慶應通信の場合——4年卒業は「可能」、でも現実は5〜6年

慶應通信は最短4年で卒業できる設計です。理論上は可能。ただし現実にそれができる人はかなり限られます。

卒論は学術論文として仕上げる必要があり、担当教官から最低3回の指導を受けることが条件です。指導の日時は教官側から指定されるため、自分でコントロールできません。私の場合、卒論完成までに約40冊の研究論文と約50冊の文献を分析しました(これでもかなり少ない方だと思います)。

そのため、誤解を恐れずに言えば「学位だけほしい」という人には、卒論のない大学のほうが圧倒的にラクです。逆に、「研究したいテーマがある」「本格的に学問に向き合いたい」という人にとっては、慶應通信は非常に魅力的な環境になります。

「4年で卒業できる」という情報だけで入学を決めると、のちのちギャップに苦しみます。5〜6年を想定したうえで「それでも続けられるか」を考えるほうが、現実的です。

入学前に知っておきたかったこと

  • レポートは1回で受かると思わない。不合格はプロセスの一部だと最初から思っておく
  • スクーリングは「勉強の息抜き兼旅行」くらいの発想で行くと続けやすい
  • 仲間は意識的に作りにいく必要がある。放っておくと完全に孤独になる
  • 学習ペースは最初から「遅め設定」にしておく。余裕があれば追加すればいい
  • 辞めたいと思ったとき、すぐに手続きをせず3ヶ月だけ保留にする

気になっている大学があれば、まず複数の資料を取り寄せて、卒業要件・スクーリング頻度・サポート体制を比較することをおすすめします。入学してから「こんなはずじゃなかった」と思うより、事前に情報を集めるほうが絶対にいい。それだけは断言できます。

(広告)

通信制大学 一括資料請求

▲ 帝京平成・東北福祉・人間総合科学・北海道情報の4校を一括で資料請求できます

慶應通信「以外」の選択肢——もし当時の自分がやり直すなら

私は慶應通信を選んで卒業しました。8年かかったけれど、後悔はしていません。それでも、振り返って思うのは——「もし当時の自分がやり直すなら、スクーリング負荷の少ない通信制大学を真剣に検討してもよかった」ということです。

慶應通信は卒論や英語必須など、本格的な学問環境がある一方、社会人にとってはハードルが高い設計でした。働きながら・育児しながら確実に卒業を目指したい人にとっては、設計の異なる大学のほうが向いている場合もあります。

特に サイバー大学 は、すべての授業がオンライン完結(スクーリング不要)。スマホ・PCで好きな時間に講義を受けられる設計で、私が苦労した「スクーリングのために休みを取る」「東京に泊まりがけで通う」という負担がありません。「働きながら確実に卒業したい」という人にとっては、現実的な選択肢の一つです。

(広告)

サイバー大学

▲ 完全オンライン完結・スクーリング不要の通信制大学

まとめ——卒業するかどうかは「意志」より「設計」の問題

通信制大学を卒業できるかどうかは、「意志が強いかどうか」ではないと、8年を経て確信しています。設計の問題です。どのペースで進めるか・しんどいときに何をするか・やらない期間をどう扱うか——これを最初から考えて入学した人と、気合いだけで入学した人とでは、3年後に大きな差が出ます。

そして、どの大学を選ぶか自体が、すでに「設計」の一部です。卒論の有無、スクーリングの頻度、サポート体制——これらの違いが、5年後の自分の状況を大きく左右します。事前にしっかり比較してから決めることを、強くおすすめします。